近年役所の提出書類の押印廃止の流れが進んでいます。
昨年の河野行革相の鶴の一声が効いているんですね。
私はとある中小企業で知財関係の仕事をしているのですが、とかく紙を出す機会が多いです。
元々特許庁へ提出する書類のうち、①出願系の手続(出願から査定が出るまでの手続)、
②年金(いわゆるpensionではなく特許権、意匠権を維持するための年次費用)や③商標更新(商標は10年ごとに更新申請をすることで更新することが可能)とかは特許庁が無償提供しているインターネット出願ソフトでのオンライン申請が可能です。
ですが、④当事者系審判(異議申立て含む)、⑤延長登録出願や⑥権利の移転等の権利化後の手続については押印済み書類が必須です。このため、紙による申請書に特許印紙を貼付して「押印した上で」郵送で提出していました。
しかし、この押印廃止の流れで上記の④と⑤についても押印は廃止となり、⑥についても「一部」押印が廃止となりました(特許庁へのリンク)。この「一部」というのが曲者で、押印が必要な書類は権利の喪失にかかわる書面、つまり、権利を譲渡・放棄をする側の権利者の押印が必要という認識を持っておけばよいということになります(上述のリンクの「(2)押印を存続する手続」を参照)。
押印廃止になる一方で、新たな押印にかかわる運用も開始されます。特許庁ではこれまで証書に押印する代表印として、会社の代表者印(会社名と代表取締役印と彫り込んである印)だけでなく、社名・役職名だけでなく「知的財産権専用」と加えて彫ってある知財部用印も代表者印として認める運用がされてきたのですが、この押印廃止の流れで代表者印として認める印は実印(登記された印)とする運用変更がされました(先ほどのリンクの(2)[2](3)参照)。このため、実印と(特許庁の審査官が)認識できない印については印鑑証明書を求められることになります。
特許庁に確認したところ、これまでの印のデータベースをやめて、実印のデータベースへ切り替えるためこのような運用にしたようです。手続をする側としたら「余計に面倒になってるやん!」と突っ込みどころ満載な変更なんですが、まぁお役所が決めてしまったことは変わりません。適応する以外はないですよね。
とか考えながら先ほど特許庁のホームページを調べてみたところ、新たな情報が出ていました。さすがに毎回印鑑証明書ではユーザの手間が増えすぎる(というかクレーム轟轟だったんでしょうね)と思ったのか「実印による証明書」を印鑑証明書に代えて提出すればよいことになったみたいです(特許庁のリンク)。これならば印鑑証明書よりはハードルが下がると思いますがやっぱり申請書類を余計に作成しないといけないのはユーザとしては手間ですね。
ちなみに上記の運用は今月から開始されていますが、年内は経過期間として旧来の運用(知財部代表者印での手続)も認めてくれていますので予定の案件のある特許事務所、知財部さんはさっさと手続した方がいいかもしれません。
詐欺等による権利の不測の喪失を防止することとユーザの利便性との狭間で特許庁も苦労しているんだろうなと思う今日この頃でした。
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